MOSS-Image-healをComfyUIで実測|fp16の破損は再現せず

ComfyUI

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紹介しているソフトとモデルは、すべて無料で入手できるものです。検証の記録に、試した環境の一覧があります。

画像を作るだけなら、MOSS-Image-heal に替える理由は今回の検証では見つかりませんでした。 元の Base は --fp16-unet でも黒つぶれや破損を起こさず、生成時間も同じです。

MOSS-Image-heal は、MOSS-Image の Base を作者の KBlueLeaf さんが学習し直したモデルです。内部の値の極端なスパイクを小さくして、fp16 で扱いやすくすることが目的で、公式値では最大値が 58,411 から 3,083 に下がっています。効き目があるのは、主に fp16 を使う学習の場面と考えられます。

先に結論(今回のテスト条件で)

項目結果
Base の fp16 での破損再現せず(--fp16-unet で9枚)
生成時間(int8、1024×1024)Base 5.6秒、heal 5.5秒
生成時間(bf16)Base 14.5秒、heal 14.5秒
VRAM ピークint8 約12.6〜12.7GB、bf16 17.2GB(Base と heal でほぼ同じ)
絵同じシードでも変わる。少し暗めで、看板の文字が崩れた回があった

Base と heal の計63枚(SFT の9枚は含みません)で、真っ黒や全面ノイズの画像は1枚もありませんでした。

  • 普通に画像を作るなら、公式テンプレートの SFT のままで十分です。
  • Base で LoRA を学習する人なら、heal は候補になります。ただし学習は今回試していません。

fp16 で壊れなかった理由は?

3つのプロンプトとシード3つで、Base と heal を同じ条件で作りました。

マグカップの写真風の比較。上が Base、下が heal。どちらも破綻はなく、KOBO Lab の文字が描かれている
マグカップの写真風の比較。上が Base、下が heal。どちらも破綻はなく、KOBO Lab の文字が描かれている

作者の報告を読むと、これは矛盾していません。Base の内部の最大値は fp16 の上限 65,504 に迫りますが、作者の計測でも Base に非有限の値は0個です。 下の表の 58,411(余裕 1.12 倍)は bf16 で計算したときの値です。fp16 で計算した別の計測では最大 61,696 で、上限との差は約6%でした。上限まで余裕が少ないのが問題で、推論でいつも壊れるわけではありません。

項目(公式値)Baseheal
内部の最大値58,4113,083
fp16 の上限までの余裕1.12倍21.2倍
全体の大きさ(RMS の平均)27.753.70
元モデルとの速度ベクトルの一致10.9983

条件によっては Base が壊れる可能性は残ります。今回の 1024×1024、9枚では起きなかった、というのが正確なところです。

同じシードでどのくらい絵が変わる?

作者の数字は「出力は Base に近い」としていますが、同じシードでも画像としては別物に近くなります。 Base と heal の PSNR は中央値 17〜18dB で、構図から変わる回があります。PSNR は差の小ささを表す値で、大きいほど近い画像です。

比べた組み合わせ(同じシード、9組)PSNR(最小〜最大、中央値)
Base と heal(bf16)9.8〜21.0dB、18.3dB
Base と heal(int8)9.4〜21.7dB、17.0dB
同じモデルの bf16 と int8(Base)18.6〜28.9dB、27.0dB
同じモデルの bf16 と int8(heal)19.0〜34.6dB、27.0dB
同じモデルの bf16 と --fp16-unet(heal)22.3〜37.8dB、27.9dB

精度を変えるより、Base と heal を替えたときのほうが大きく変わります。Base で作った画像をシードで再現したい人は、替えないでください。

アニメ風のイラストの比較。上が Base、下が heal。heal は線が柔らかく全体に淡い
アニメ風のイラストの比較。上が Base、下が heal。heal は線が柔らかく全体に淡い

イラストでは、heal のほうが淡く、髪や服の線が柔らかく見えました(筆者の見立て)。

看板の文字は崩れやすかった

MOSS と書かれた看板を描く指定で、Base は3シードとも文字が読めました。heal は崩れる回があります。

夜の店の看板の比較。上が Base で MOSS の文字が読める。下が heal で文字が暗く太くなる回がある
夜の店の看板の比較。上が Base で MOSS の文字が読める。下が heal で文字が暗く太くなる回がある
精度Base で読めた枚数heal で読めた枚数
int83 / 31 / 3
bf163 / 32 / 3
--fp16-unet3 / 32 / 3

読めたかどうかは私の判断で、シード3つだけの結果です。マグカップの KOBO Lab は、どちらも全部読めました。作者の説明では、heal は danbooru の画像約100万枚で学習し直されています。文字の差との関係は確かめていません。

SFT と比べると?

ComfyUI の公式テンプレートが使うのは SFT で、Base とも heal とも別の仕上げです。比べると、SFT のほうが細部がはっきりしています。鮮明さの値(ラプラシアン分散の平均)は SFT 522、Base 264、heal 267 でした。

SFT と heal の比較。SFT は髪の線と細部がはっきりしている
SFT と heal の比較。SFT は髪の線と細部がはっきりしている

時間とメモリの実測

1024×1024、25 ステップ、CFG 2.5、er_sde、simple です。テキストエンコーダーはテンプレートと同じ w4a8 で、読み込み後の時間です。各9枚です。

モデル精度1枚1ステップVRAM ピーク(全体)
Baseint85.6秒0.21秒12.7GB
healint85.5秒0.21秒12.6GB
SFTint85.5秒0.21秒12.6GB
Basebf1614.5秒0.57秒17.2GB
healbf1614.5秒0.57秒17.2GB
Base--fp16-unet14.6秒0.57秒17.5GB
heal--fp16-unet(fp16 ファイル)14.6秒0.58秒17.2GB

速さとメモリの差はありません。fp16 にしても bf16 と同じ時間でした。前回の MOSS-Image の記事の値(int8 で約5.8秒)とも近い結果です。

heal_fp16 のファイルは要る?

今回は bf16 ファイルで足りました。 同じ --fp16-unet で moss_image_heal_bf16 と moss_image_heal_fp16 を比べると、9枚すべて完全に同じ画像でした。ファイルの中身を比べると、379 個のうち 378 個のテンソルが、bf16 を fp16 に変換した値と一致しています。残りの1個がどのテンソルで、どう違うかは記録していません(未確認)。

導入の手順

  1. ComfyUI を 0.42.0 以上にします(アップデートの方法)。今回は v0.44.0 です。
  2. 下のモデルを models\diffusion_models に置きます。テキストエンコーダーと VAE は MOSS-Image のものをそのまま使います。
  3. テンプレートの MOSS-Image の Load Diffusion Model で、heal のファイルを選びます。
ファイルサイズ用途
moss_image_heal_int8_convrot.safetensors5.4GB迷ったらこれ
moss_image_heal_bf16.safetensors10.2GBbf16 で動かす
moss_image_heal_fp16.safetensors10.2GB--fp16-unet で動かす
qwen3.5_9b_w4a8_gptq.safetensors7.3GBmodels\text_encoders
flux2-vae_small.safetensors0.25GBmodels\vae

比較に使った Base は moss_image_base_int8_convrot と moss_image_base_bf16 です。

  • moss_image_heal_int8_workflow.jsonComfyUI にドラッグして読み込みます(heal int8、1024×1024、25 ステップ、CFG 2.5。カスタムノードは不要です)
MOSS-Image-heal のワークフロー。モデル、CLIP、VAE を読み込み、KSampler で生成して保存する標準の構成
MOSS-Image-heal のワークフロー。モデル、CLIP、VAE を読み込み、KSampler で生成して保存する標準の構成

画面から実行して、成功を確かめました。カスタムノードは使っていません。

fp16 で動かすときは、起動時に --fp16-unet を付けます。

python_embeded\python.exe -s ComfyUI\main.py --windows-standalone-build --fp16-unet

RTX 5090 以外の人へ

--reserve-vram を変えて、heal int8 を各9枚作りました。待機中の VRAM は約1.9GB です。

--reserve-vram結果1枚VRAM ピーク(全体)
指定なし9枚とも成功5.5秒12.6GB
209枚とも成功5.5秒12.6GB
249枚とも成功5.5秒10.1GB

VRAM 容量が少ない環境を想定した簡易テストです。実際の 8GB・12GB 搭載 GPU での動作を再現・保証するものではありません。 使う VRAM を絞っても時間は変わりませんでした。RAM は ComfyUI だけで約14GB です。

VRAM が足りないときの全般の対処はこちらにまとめています。

商用で使うときの条件は?

heal のカードは Apache-2.0 で、「公式の MOSS-Image の重みと同じ」と書かれています。元の OpenMOSS-Team/MOSS-Image-Base と Comfy-Org/MOSS-Image のカードも Apache-2.0 で、一致しています(2026年11月5日に確認)。

一方で、作者の説明では、heal は danbooru の画像で学習し直されています。カードのライセンスは重みの条件で、学習データに含まれる作品の権利まで扱うものではありません。作品の雰囲気を真似る使い方には、別の注意が要ります。

よくある質問(FAQ)

Q. MOSS-Image-heal で画質は良くなりますか?

今回の3プロンプトでは、はっきり良くなったとは言えません。同じシードでも絵が変わり、看板の文字は崩れる回がありました。

Q. MOSS-Image を fp16 で動かすと黒くなりますか?

今回の Base では9枚とも黒くなりませんでした。ただし公式値では上限までの余裕が小さいので、ほかの条件で起きないとは言い切れません。

Q. heal は速いですか?

速さは Base と同じでした。int8 で1枚約5.5秒、bf16 で約14.5秒です。

Q. SFT と heal はどちらがいいですか?

画像を作るなら、公式テンプレートの SFT を勧めます。今回は SFT のほうが細部がはっきりしていました。

Q. LoRA は使えますか?

手元に合う LoRA がなく、未確認です。

Q. ライセンスは商用利用できますか?

カードは Apache-2.0 で、元の MOSS-Image と同じです。

まとめ

  • --fp16-unet でも Base は壊れず、heal で時間も VRAM も変わりませんでした。
  • 同じシードでも絵は変わります。普通に画像を作るなら SFT のままで十分です。

heal の本来の価値は、fp16 を使う学習のほうにあるはずです。今回は推論だけなので、その部分は確かめていません。

この記事の検証環境

RTX 5090(32GB)/ Ryzen 9 9950X3D / 128GB / Windows 11 / ComfyUI v0.44.0(カスタムノードなし)/ PyTorch 2.14.0+cu130 / MOSS-Image-heal・Base・SFT / 2026年11月5日
これまでの検証の一覧はこちら

検証メモ

  • 本数:プロンプト3種とシード3つの9枚を、Base と heal の int8、bf16、--fp16-unet、SFT の int8 で作りました。Base は 27 枚、heal は 36 枚、SFT は9枚です。「計63枚」は Base と heal の合計です。
  • --fp16-unet の Base:Comfy-Org に Base の fp16 ファイルはないので、bf16 のファイルを --fp16-unet で動かしました。
  • サンプラー:ComfyUI のテンプレートの設定です。作者の比較(16 ステップ、CFG 3、shift 5)とは違います。
  • 黒つぶれの見方:全画像を目で見て、画素の統計も取りました。明るさの差(標準偏差)が最小でも 32 あり、一色の画像はありません。
  • 文字の判定:私が目で読めるかを見た結果です。シード3つでは傾向の目安にしかなりません。
  • 未確認のこと:LoRA の併用、MOSS-Image の編集モデルとの組み合わせ、学習、1024×1024 以外、ほかの GPU、作者の設定(16 ステップ)。

参考リンク

この記事を書いた人
こまたろ

画像生成 AI に興味を持ったのがきっかけで、3年ほど前から ComfyUI を触っています。始めたころは今ほど情報がそろっておらず、何時間もかけて整えた環境が翌日のアップデートで動かなくなったこともありました。

KOBO Lab は、自分の学び直しと、これから ComfyUI を始める人が同じところでつまずかないようにと思って始めたサイトです。初心者も中級者も、迷ったときに開くサイトを目指しています。

検証は、RTX 5090 を積んだ自作 PC 1台で、実際に動かして確かめています。作業を楽にするための自作ツールも作っています。

記事は、運営者自身の経験と検証をもとに、Claudeで下書きを作り、GrokボットとMuseでも添削や確認をして仕上げています。

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