結論:update_comfyui_and_python_dependencies.bat が CPU 版の torch を入れてしまうのが原因です。まだ壊れていないなら update_comfyui.bat だけで更新し、壊れたら CUDA 版の torch を入れ直します。
Windows向けのComfyUI Portable版でこのbatを実行したあと、「Torch not compiled with CUDA enabled」と出てComfyUIが起動しなくなる。この症状が、ComfyUIの公式GitHubで報告されています。筆者もテスト用のコピーで同じ症状を再現し、torchの入れ直しで起動するところまで確かめました。
情報は2026年10月31日時点(JST)のものです。試した条件は末尾の「検証メモ」にまとめています。
この記事で扱うのは、Windows向けのPortable版(フォルダを展開して使う版)です。デスクトップ版やインストーラー版は対象外です。
ComfyUIの更新方法そのものを知りたい人は、先にこちらを読んでください。
関連記事:ComfyUIのアップデート方法
症状:更新後に「Torch not compiled with CUDA enabled」で起動しない
公式GitHubのIssue #11575 によると、症状は次のとおりです。
update\update_comfyui_and_python_dependencies.batを実行し、最後まで終わらせる- いつものように
run_nvidia_gpu.batでComfyUIを起動する - 起動の途中で止まり、次のエラーが出る
AssertionError: Torch not compiled with CUDA enabled
エラーの途中には comfy/model_management.py や torch/cuda/__init__.py という名前が出てきます。ComfyUIがGPUを探す段階で失敗している、という意味です。
更新するまでは普通に動いていたのに、batを1回実行しただけで起動しなくなります。
原因:torchがCPU版に入れ替わる
torchはComfyUIの計算の土台
torch(PyTorch)は、ComfyUIが画像や動画を計算するときに使う土台のライブラリです。ComfyUIそのものではなく、ComfyUIの下で実際の計算をする部品だと考えてください。
用語メモ:ライブラリ=ほかのプログラムから呼び出して使う、部品のようなプログラムのこと。
CUDA版とCPU版の違い
torchには、大きく分けて2つの種類があります。
- CUDA版:NVIDIAのGPUで計算できる版。ファイル名やバージョンに
cu130やcu129のような印が付きます - CPU版:GPUを使わず、CPUだけで計算する版
用語メモ:CUDA(クーダ)=NVIDIAのGPUで計算するための仕組み。
cu130は「CUDA 13.0向け」という意味です。
見た目のバージョン番号が新しくても、CPU版ではGPUを使えません。ComfyUIはGPUで動かす前提で起動するので、CPU版のtorchが入っていると「このtorchはCUDA向けに作られていない」というエラーで止まります。それが「Torch not compiled with CUDA enabled」の意味です。
なぜCPU版に入れ替わるのか
修正のために出されたプルリクエスト(PR)#17449 の説明によると、原因は次のとおりです。
update_comfyui_and_python_dependencies.batは、torchを入れるときに--extra-index-urlという指定を使っている- この指定だと、pip(Pythonの部品を入れる道具)は、通常の配布場所(PyPI)とCUDA版の配布場所の両方を見て、いちばん新しいバージョンを選ぶ
- torch 2.15.0 はPyPIにはあるが、cu130(CUDA 13.0向け)の配布場所にはまだない
- その結果、PyPIにあるWindows用のCPU版 torch 2.15.0 が選ばれ、CUDA版と入れ替わってしまう
用語メモ:プルリクエスト(PR)=プログラムの修正案。開発者が確認して取り込む(マージする)と、本体に反映されます。
つまり、ComfyUI本体やカスタムノードが壊れたのではなく、更新用のbatが入れるtorchの種類が変わってしまったことが原因です。Issueのコメントでも「カスタムノードが原因ではない」と書かれています。
回避策A:update_comfyui.batだけを使う
まだ壊れていない人は、update_comfyui_and_python_dependencies.bat を使わず、update フォルダにある update_comfyui.bat だけで更新する方法があります。
update_comfyui.bat:ComfyUI本体を更新するupdate_comfyui_and_python_dependencies.bat:ComfyUI本体に加えて、torchなどのPythonの部品もまとめて入れ直す
torchを入れ直す処理を通らないので、CPU版に入れ替わる問題を避けられます。ただし、新しいComfyUIが新しいtorchやPythonの部品を必要とする場合は、別の対応が必要になることがあります。
筆者の環境(RTX 5090/RAM 128GB/Win11)で、テスト用のPortable版をコピーして確かめました。update_comfyui.bat だけで更新したコピーでは、torchは 2.14.0+cu130 のまま変わらず、ComfyUIも普通に起動しました。
一方、同じ状態から update_comfyui_and_python_dependencies.bat を実行したコピーでは、torchが 2.15.0+cpu(約127MB)に入れ替わり、torch.cuda.is_available() は False。起動すると、記事の冒頭と同じ「AssertionError: Torch not compiled with CUDA enabled」で止まりました。報告どおりの症状を、手元でも再現できたことになります。
回避策B:CUDA版のtorchを入れ直す
すでに起動しなくなった人は、CUDA版のtorchを入れ直します。ここでは、Issueのコメントにある方法と、筆者が実際に直せた方法の2つを紹介します。
Issueのコメントにある方法(cu129)
Issue #11575 の zappazack 氏のコメント(日本時間2026年1月4日)に、cu129 で入れ直す手順が書かれています。出典のコメントに書かれているコマンドを、そのまま載せます。
cd ComfyUI_windows_portable\python_embeded
.\python.exe -m pip uninstall -y xformers
.\python.exe -m pip uninstall -y torch
.\python.exe -m pip install torch==2.8.0+cu129 --index-url https://download.pytorch.org/whl/cu129
.\python.exe -m pip install torchvision==0.23.0+cu129 --index-url https://download.pytorch.org/whl/cu129
.\python.exe -m pip install torchaudio==2.8.0+cu129 --index-url https://download.pytorch.org/whl/cu129
コマンドを使うときの注意です。
- 1行目の
ComfyUI_windows_portableは、自分のPortable版のフォルダ名に合わせて変えてください - コメントの投稿者は、xformersが入っているとtorchの入れ替わりが起きることがあるとして、先にxformersを外しています。入れ直したあとも「xformersを入れないように」と書いています
- このコメントのコマンドは cu129(CUDA 12.9向け) です。最近のPortable版は cu130 を使っています(PR #17449 の説明より)。この cu129 のコメントには、cu130 のコマンドは書かれていません。cu130 のコマンドは、別のコメント(deedizard 氏、日本時間2026年10月31日)にあります
--index-urlは、「この配布場所だけを見る」という指定です。--extra-index-urlと違って、PyPIのCPU版が選ばれることはありません
筆者の環境でこのコマンドをそのまま実行すると、ComfyUIは起動しました。ただし、torchが 2.8.0+cu129 まで下がり、起動時に次の警告が出ました。
You need pytorch with cu130 or higher to use optimized CUDA operations.
起動はするものの、ComfyUIの一部の最適化が使えない状態です。
筆者が直せた方法(cu130を入れ直す)
筆者は、元と同じ cu130 のtorchを、CUDA版の配布場所だけから入れ直す方法でも試しました。同じコマンドが、deedizard 氏のコメントにも書かれています。筆者は自分の環境で実行して、結果を確かめました。実行したコマンドは次のとおりです。
..\python_embeded\python.exe -s -m pip install --force-reinstall torch torchvision torchaudio --index-url https://download.pytorch.org/whl/cu130
..\python_embeded\python.exeは、python_embededと同じ階層にあるフォルダ(たとえばupdateフォルダ)から実行したときの書き方です--force-reinstallは、すでに入っているものも入れ直す指定です- 筆者の環境では、ダウンロードが約2GBあり、終わるまで約12分かかりました
結果は、torch 2.14.1+cu130 が入り、torch.cuda.is_available() は True になりました。ComfyUIも起動し、cu130についての警告も出ませんでした。
cu129に下げるよりも、cu130を入れ直すほうが、警告の出ない元の状態に近く戻せました。1台での結果です。
筆者の環境では、PowerShellからbatをファイル名だけで呼ぶと見つからず、フルパスで呼ぶと動きました。
入れ直したあと、torchがCUDA版かどうかは、python_embeded フォルダで次のコマンドを実行すると確かめられます。結果が True ならGPUを使えます。
.\python.exe -c "import torch; print(torch.__version__, torch.cuda.is_available())"
修正PR #17449の状況
この問題を直すためのPR #17449「Fix portable deps updater installing CPU-only torch from PyPI」は、日本時間2026年10月31日の朝(GitHub の表示は UTC の10月30日)に出され、執筆時点ではまだマージされていません(open)。
PRの内容は、torchを --index-url でCUDA版の配布場所だけから入れるように変える、というものです。マージされたかどうかは、PRのページで確認してください。
注意点が1つあります。PRの説明によると、マージされても、すでに手元にあるPortable版のbatは古いままです。更新の仕組みが書き換えるのは update.py と update_comfyui_stable.bat だけだからです。修正されたbatを使いたい場合は、新しいPortable版を入れ直す必要があるかもしれません(未確認)。
補足:VAE Compute DtypeをFP16にすると速いという報告
更新で使えるようになった新しいノードの話も1つ紹介します。ComfyUIには、VAE(画像を最後に絵として取り出す部品)の計算精度を選べる「VAE Compute Dtype」というノードが追加されました。選べるのは default/fp32/fp16/bf16 の4つです。
このノードで VAE の精度を変えると速さが変わる、という話は X(旧Twitter)の投稿でも見かけました(投稿は参考リンクに載せています)。投稿の数字は投稿者の自己申告なのでここには載せず、筆者の PC で測り直しました。
筆者の環境(RTX 5090、ComfyUI 7c4390a6、3840×2160、3回の平均)でも測ってみました。
| VAE | default | fp16 | bf16 | fp32 |
|---|---|---|---|---|
| flux2-vae_small | 1,122ms | 1,095ms | 1,076ms | 2,419ms |
| flux2-vae | 1,569ms | 1,428ms | 1,436ms | 12,164ms |
筆者の環境では、fp16とbf16がほぼ同じ速さでした。fp32は、FLUX.2 の VAE(flux2-vae)でfp16の約8.5倍の時間がかかりました(fp32 12,164ms / fp16 1,428ms)。flux2-vae_small では約2.2倍です(2,419ms / 1,095ms)。fp16 が速いという投稿の話と、向きは同じでした。
defaultは、ログを見るとfp16で動いていました。FLUX.2 の時間とメモリはFLUX.2 [dev]の実測にまとめています。なお、筆者は速度だけを測っていて、画質の違いは比べていません。
用語メモ:fp16/bf16/fp32=数値を何ビットで計算するかの種類。fp32は精度が高いぶん遅く、fp16とbf16は軽くて速い代わりに精度が少し下がります。
よくある質問(FAQ)
Q. update_comfyui_and_python_dependencies.bat は、もう使わないほうがいいですか?
PR #17449 がマージされるまでは、torchがCPU版に入れ替わる可能性があります。必要がなければ、update_comfyui.bat だけで更新するのが安全です。
Q. カスタムノードを全部外せば直りますか?
Issueのコメントでは、カスタムノードが原因ではないとされています。torchを入れ直してください。
Q. RTX 5090以外のGPUでも起きますか?
原因はtorchの入れ替わりなので、GPUの種類には関係なく、NVIDIAのGPUでPortable版を使っている人は起こりえます。
Q. デスクトップ版のComfyUIでも起きますか?
出典はPortable版の更新用batの話です。デスクトップ版については書かれていません(未確認)。
まとめ
- 「Torch not compiled with CUDA enabled」は、更新用のbatがCPU版のtorch(2.15.0)を入れてしまうことで起きる
- まだ壊れていない人は、
update_comfyui.batだけで更新する - 壊れた人は、
--index-urlでCUDA版のtorchを入れ直す。筆者の環境では、cu129に下げるより、cu130を入れ直すほうが警告なしで直った
修正PR #17449 は執筆時点で未マージです。PRのページで状況を確認してください。
カスタムノードの入れ方や、更新で壊れたときの考え方はこちらの記事も参考にしてください。
関連記事:ComfyUIのインストール方法
関連記事:カスタムノードの入れ方
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検証メモ
- 試した環境:Windows 11 / RTX 5090 / RAM 128GB。ComfyUI v0.43.0(426f5eea)のPortable版(Python 3.13.14、torch 2.14.0+cu130)から、テスト用のコピーを2つ作って試しました。元のフォルダーは変更していません。
- 確かめた範囲:torchの版、
torch.cuda.is_available()、ComfyUIの起動までです。直したあとの画像生成は試していません。 - 依存ごと更新したコピー:bat の冒頭で呼ばれる
update_comfyui.batが動かなかったらしく、ComfyUI本体は v0.43.0 のままでした。torchの入れ替わりはその後の pip の行で起きるので、結論は変わりません。 - cu130 の手順:cu129 を試したあと、
2.15.0+cpuの壊れた状態に戻してから実行しました。入ったのは 2.14.1 で、元の 2.14.0 とは少し違います。--force-reinstallなので numpy などほかの部品も入れ直され、setuptools など一部は版が下がりました。 - VAE の測定:ComfyUI 7c4390a6、3840×2160、3回の平均です。
- 未確認のこと:デスクトップ版、NVIDIA 以外のGPU、PR #17449 のマージ後の動き、新しいPortable版の入れ直し。
参考リンク
- ComfyUI Issue #11575(cu129 の手順のコメント、zappazack 氏):https://github.com/Comfy-Org/ComfyUI/issues/11575#issuecomment-3707431253
- ComfyUI Issue #11575(症状と回避策のコメント):https://github.com/Comfy-Org/ComfyUI/issues/11575#issuecomment-6535841365
- ComfyUI PR #17449(修正案):https://github.com/Comfy-Org/ComfyUI/pull/17449
- PyTorch 公式のインストール案内:https://pytorch.org/get-started/locally/
- ComfyUI PR #17450(VAE Compute Dtype ノード):https://github.com/Comfy-Org/ComfyUI/pull/17450
- VAE Compute Dtypeについての投稿(X、自己申告):https://x.com/ITOKtw/status/2116416100187717953
