RTX 5090を1枚にするか、安いGPUを2枚にするか、中古の3090にするかは、用途で答えが変わります。集めた報告からは、「やめとけ」とも「買うべき」とも言えませんでした。
「RTX 5090はやめとけ」「買って後悔した」という声や、「安いGPUを2枚にしたほうがいいのでは」「中古の3090で十分では」という意見はよく見かけます。この記事では、X(旧Twitter)やRedditに投稿された報告と、筆者のRTX 5090での実測をもとに、判断の材料を並べました。
紹介する他の人の数値は、どれも投稿者が自分の環境で測った自己申告・未検証の値です。GPUの枚数だけでなく、CPUやモデル、設定もそれぞれ違います。価格の予想もしません。情報は2026年10月31日時点(JST)のもので、数値の読み方は末尾の「検証メモ」にまとめました。
用語メモ:VRAM=GPUに載っているメモリ。画像・動画生成やローカルLLMでは、モデルがVRAMに収まるかどうかで速さが大きく変わります。
RTX 5090 1枚か、安いGPU 2枚か:迷う人は多い
Xでは、こんな投稿がありました。RTX 5090を買えば画像や動画の生成は速くなる。でも画像生成ならVRAM 8GBで十分で、GPUを2枚挿して生成の順番待ち(キュー)を2本同時に走らせれば、実質2倍の枚数を作れる。そのほうが5090を1枚買うよりコストパフォーマンスがいいのでは、という問いかけです。これは投稿者個人の意見で、実測は含まれていません。
用語メモ:キュー=生成の順番待ちの列。2枚のGPUで別々のキューを動かすと、1枚ずつ同時に作れます。
ここで大事なのは、「1枚の画像が速くできる」ことと、「同じ時間にたくさん作れる」ことは別だという点です。2枚構成が得意なのは、後者。
迷う理由は、用途によって「効く」構成が違うからです。ここからは、画像・動画生成とローカルLLMに分けて、報告を見ていきます。
画像・動画生成での報告
RTX 5060 Ti 2枚:1枚より約2.19倍速かったという報告
RTX 5060 Ti(VRAM 16GB)を2枚使っている人のブログ記事では、動画生成モデルのMiniMax H3で、8ステップ・10秒(672×928、24fps)の動画を作る時間を、1枚と2枚で比べています。時間はモデルの読み込みからVAE・保存までを含みます。3つのシードの中央値は次のとおりです(自己申告)。
| 構成 | 生成時間(中央値) |
|---|---|
| RTX 5060 Ti 1枚 | 1,062.4秒 |
| RTX 5060 Ti 2枚 | 484.6秒 |
2枚のほうが約2.19倍速かったという結果です。
2枚の使い方は、「H3VM」というノードで、1本の動画を作る処理の一部(attention)を2枚に分けて計算する方法です。1枚のときは、同じワークフローからこのノードを外して測っています。分け方の細かい仕組みは、この記事には書かれていません。また、2枚のときはメインメモリの使用量(コミット)が約100GiBまで増えていました。
同じ記事とXの投稿では、5060 Ti 2枚のまま、CPUとマザーボード(PCIe 3.0から4.0のx8/x8へ)を替えたところ、20ステップ・10秒の生成時間が1,198.1秒から989.8秒に、約17%短くなったとも報告しています(自己申告)。投稿者自身は、CPUや電源、冷却も替えているので、PCIe 4.0だけの効果とは言えないと書いています。これはGPUの枚数ではなく、CPUとマザーボードを替えた前後の比較です。2枚構成では、GPU以外の部品も速さに関わることがわかります。
用語メモ:ステップ数=画像や動画を少しずつ仕上げる回数。多いほどきれいになりやすい代わりに、時間がかかります。
RTX 3090 1枚:H3の音付き10秒が277秒
中古で人気のRTX 3090(VRAM 24GB)を1枚使って、H3で音付きの10秒動画を作ったところ、277秒だったという投稿があります(自己申告)。
2枚にしても速くならない例がある
ただし、GPUを2枚にすれば何でも速くなるわけではありません。
- 2枚で別々の画像を同時に作れば、作れる枚数は増えます。1枚の画像ができるまでの時間は短くなりません。1枚の画像や動画を作る処理を2枚に分けられるかどうかは、使うソフトやノードで決まります
- Redditのコメントでは、RTX 5090とRTX 5060 Tiを組み合わせたら、5090 1枚より遅くなったという声もあります(ローカルLLMの話、自己申告)
- 上の17%の例のように、CPUやマザーボードなど、GPU以外の部品でも速さが変わります
関連記事:ComfyUIのVRAM不足の対処
ローカルLLMでの報告
用語メモ:tok/s=1秒あたりに生成できるトークン(文字のかたまり)の数。大きいほど速く文章が出てきます。
RTX 5090 2枚:エンジンによって135〜504 tok/s
Redditでは、RTX 5090を2枚使い、Qwen3.8-Flash-Nextを4つの推論エンジンで比べた投稿があります(自己申告)。PCはThreadripper PRO 3975WX、メモリ251GB、コンテキスト262Kです。
| エンジン・量子化 | 文章の生成/コードの生成(tok/s) |
|---|---|
| QEngine 1.3.1(KVをVRAMに置く、既定) | 370/439 |
| QEngine 1.3.1(KVをRAMに置く) | 406/504 |
| Strata ISTA IQ3_S | 214/293 |
| Strata UD-IQ4_XS | 180/239 |
| vLLM(調整版) | 135/141 |
用語メモ:推論エンジン=モデルを読み込んで文章を生成するソフト。同じモデルでも、エンジンによって速さが変わります。
この数値を読むときの注意点が、投稿者自身とコメント欄から出ています。
- 投稿者は、同じプロンプトを繰り返すテストなので、QEngineの数値は「最良に近い」と書いています。実際の使い方では300〜400 tok/s程度だったそうです
- コメント欄では、「QEngineは読み込むときにモデルを量子化し直していて、元のモデルとの差(KLD)が約0.14から約0.45に広がる。品質が落ちる」という指摘が出ています
速さだけでなく、出力の品質も合わせて見る必要があります。
Strataについては、こちらの記事で詳しく紹介しています。
関連記事:Strataとは?必要スペックと導入手順
RTX 3060 12GBでも約50 tok/sという報告
安いGPUの例として、RTX 3060(VRAM 12GB)とメインメモリ16GBのPCで、Qwen3.8-35B-A3Bが約50 tok/sで動いた、という開発者の報告を紹介する投稿もあります(自己申告)。
- 量子化はQ4_K_M、推論エンジンはllama.cpp
- 文章の生成は約50 tok/s、プロンプトの読み込みは約550 tok/s
- モデルの一部(26層)をCPUとメインメモリに任せている
- コンテキストの設定は262Kトークン。ただし投稿でも、「設定できる長さと、その長さで実際に出る速さは別」と注意しています
Qwen3.8-35B-A3Bは、全体で約350億パラメータのうち、1回に使うのは約30億というMoEモデルです。こうした種類のモデルなら、VRAMが少ないGPUでも実用的な速さになることがある、という例です。
用語メモ:MoE=モデルの中に多くの専門家を持ち、入力ごとに一部だけを使う仕組み。全体は大きくても、1回の計算は軽くなります。
2枚構成の注意点:電源
GPUを2枚使うと、電源の取り方にも注意が必要です。
ワークステーション(業務用のPC)のThinkStationで、業務用GPUのRTX 5880を使っている人の投稿です(自己申告)。このPCは電源が2系統あり、最初は2本目の電源ケーブルをつないでいませんでした。動画生成モデルのH3を動かしたとき、GPUの消費電力が約125Wで頭打ちになっていることに気づき、2本目をつなぐと280〜284Wで動くようになったそうです。1本あたりの生成時間は、約420秒から約115秒に縮んだと書かれています。
これはGeForceを一般的な自作PCで使った例ではなく、ワークステーションでの例です。ただ、「電源が足りないと、GPUが本来の性能を出せないことがある」という点は、2枚構成を考えるときの参考になります。2枚にするなら、電源ユニットの容量や、ケーブルの取り回しも確かめておきましょう。
関連記事:ComfyUIに必要なPCスペック
今後の値上がりの可能性
PCの部品の価格については、気になる報道もあります。Tom’s Hardwareは2026年10月29日、日経アジアの報道をもとに、AI需要でPCの基板(PCB)が不足していると伝えました。
- 一部の基板の注文は、届くまで最大30か月かかる
- 基板の材料(銅張積層板)の価格は、7月から少なくとも12倍に上がった
記事の中でGPUについて詳しくは書かれていませんが、2026年はRAMやGPU、SSDなどの値上がりが続いたことにも触れています。今後、GPUを含むPC部品が値上がりする可能性はありますが、どれくらい上がるかはわかりません。この記事では価格の予想はしません。
筆者のRTX 5090での実測
筆者のPC(Ryzen 9 9950X3D/RTX 5090 1枚/メモリ128GB/Windows 11)での実測です。時間は2回目以降(モデルの読み込みを含まない)の値です。条件は記事ごとに違うので、詳しくはそれぞれの記事を見てください。
画像生成
| モデル | 条件 | 1枚の時間 |
|---|---|---|
| SDXL 1.0 Base | 1024×1024・25ステップ | 約2.9秒 |
| Illustrious XL v2.0 | 832×1216・28ステップ | 約3.3秒 |
| Anima Base v1.0 | 832×1216・30ステップ | 約6.6秒 |
| MOSS-Image(int8) | 1024×1024・25ステップ | 約5.8秒 |
| FLUX.2 dev(fp8) | 1024×1024・20ステップ | 約19.7秒 |
動画生成
| モデル | 条件 | 1本の時間 |
|---|---|---|
| Wan 2.2 T2V 14B(fp8)+LightX2V | 1280×720・81フレーム・4ステップ | 約114秒 |
| Pika H3 Flex(MiniMax H3ベース) | 864×480・5秒 | 約22秒 |
| Pika H3 Flex(MiniMax H3ベース) | 1344×768・5秒 | 約82秒 |
| Pika H3 Flex(MiniMax H3ベース) | 1344×768・10秒 | 約263秒 |
Pika H3 FlexはMiniMax H3をもとにしたモデルですが、上の3090や5060 Tiの報告とは、モデル・解像度・ステップ数が違います。数値を並べて直接比べることはできません。H3系では、VRAMを約29〜31GB使いました。
ローカルLLM
| モデル | 条件 | 速度 |
|---|---|---|
| Qwen3.8-27B Q4_K_M(llama.cpp) | MTPなし/あり | 74〜78 tok/s/113〜189 tok/s |
| Qwen3.8-27B Q8_0(llama.cpp) | MTPなし | 48〜49 tok/s |
| Qwen3.8-Flash-Next Q2_0(Strata v0.2.9) | 既定 | 194〜223 tok/s |
| gpt-oss-120b MXFP4(llama.cpp) | 自動の分担 | 約29 tok/s |
GPU 2枚の構成は、筆者の手元にないので試していません(未検証)。
関連記事:RTX 5090の速度検証
どんな人にどれが向くか
ここまでの報告だけで言えることを、用途ごとにまとめます。どれも条件のそろった比較ではないので、目安として見てください。
動画生成を中心にしたい人
- 5060 Ti 2枚は、1枚より約2.19倍速かったという報告があります。ただし、H3VMのように2枚に処理を分けるノードが前提で、メインメモリも多く使います
- 3090 1枚では、H3の音付き10秒が277秒という報告があります
ローカルLLMを中心にしたい人
- 5090 2枚では、エンジンによって135〜504 tok/sという報告があります。ただし、最速のエンジンには品質についての指摘があります
- 5090と別のGPUの組み合わせでは、1枚より遅くなったという声もあります
手軽に始めたい人
- RTX 3060 12GBでも、モデルによっては約50 tok/sで動いたという報告があります
2枚構成を考える人
- 電源の容量と取り方、CPUやマザーボードも速さに関わります
よくある質問(FAQ)
Q. RTX 5090は本当に「やめとけ」なのですか?
この記事で集めた報告からは、「やめとけ」とも「買うべき」とも言えません。用途、予算、使うソフトで、向く構成が変わります。
Q. GPUを2枚にすれば、画像生成も2倍速くなりますか?
2倍速くなるとは限りません。2枚に処理を分けられるかは、使うソフトやノードで決まります。
Q. 中古の3090は、VRAM 24GBで足りますか?
この記事の報告だけでは判断できません。H3の音付き10秒を277秒で作れたという報告はありますが、解像度やステップ数は投稿に書かれていませんでした。
まとめ
- 5060 Ti 2枚は、H3の動画生成で1枚より約2.19倍速かったという報告があり、3090 1枚では、H3の音付き10秒が277秒という報告がある(どちらも自己申告)
- 5090 2枚のローカルLLMは、エンジンによって135〜504 tok/s。最速のエンジンには品質の指摘がある
- 2枚構成では、電源やCPU・マザーボードも速さに関わる。PCの基板不足の報道があり、値上がりの可能性はあるが、価格は予想できない
検証メモ
- 他の人の数値:投稿やブログに書かれた値をそのまま載せました。筆者は再現していません。Redditの3件は、ブラウザーの制限で直接読めなかったので、運営者が保存した本文から転記しています。
- 筆者の実測:これまでの記事の値を並べたもので、新しく測っていません。GPU 2枚の構成は手元にないので未検証です。
- 比べ方:報告と筆者の実測は、モデル・解像度・ステップ数が違うので、直接は比べられません。
関連記事
- Qwen3.8-27BとFlash-Next比較|VRAM 32GBで選ぶならどっち?INT4とINT8の違いも
- gpt-oss-120bはRTX 5090とRAM 128GBで動く?llama.cppで実測
- Qwen3.8-27Bをllama.cppのMTPで速くする設定【RTX 5090実測】
参考リンク
- rootport氏の投稿(X):https://x.com/rootport/status/2116373415699550498
- Phantom氏の投稿(X、CPUとマザーボードの交換前後):https://x.com/Phantom_202601/status/2116318604019057100
- Phantom氏のブログ記事「生成AI研究室(39)」:https://make-profit.net/2026/10/31/genai-lab-39-dual-5060ti-z590-11700k-same-condition-benchmark/
- あいり氏の投稿(X、3090でH3):https://x.com/airi_ai_navi/status/2116337081362563219
- Oluwaphilemon1氏の投稿(X):https://x.com/Oluwaphilemon1/status/2116328744969236732
- 刚哥氏の投稿(X、電源):https://x.com/guntherjourney/status/2116332293891772617
- Reddit「Qwen3.8-Flash-Next on 2x RTX 5090 with 504 tok/s decode」:https://www.reddit.com/r/LocalLLaMA/comments/1xjx0ez/
- Tom’s Hardware「AI demand triggers massive PCB shortage for PC makers」(2026年10月29日):https://www.tomshardware.com/pc-components/ai-demand-triggers-massive-pcb-shortage-for-pc-makers-as-order-books-full-until-2030-lead-times-stretch-to-30-months-as-material-costs-surge-12x
