VRAMが32GBのPC(RTX 5090など)でローカルLLMを動かすなら、長い文脈の作業や難しいコーディングではQwen3.8-27Bが上回り、短い1回の答えではQwen3.8-Flash-Nextが少し有利でした。海外の掲示板Redditに投稿された比較の結果です。
この記事では、その比較と、量子化のINT4とINT8で「ループ」の起きやすさを比べた報告を紹介します。筆者のRTX 5090で測った速度とループの結果も載せました。
紹介する数値は、どれも投稿者が自分の環境で測った自己申告・未検証の値です。情報は2026年10月31日時点(JST)のものです。
用語メモ:ローカルLLM=ChatGPTのような文章生成AIを、クラウドではなく自分のPCで動かすこと。
用語メモ:VRAM=GPUに載っているメモリ。モデルがVRAMに収まるほど速く動きます。
Qwen3.8-27BとFlash-Nextの違い
先に、2つのモデルの違いをざっくり押さえておきます。
- Qwen3.8-27B:270億パラメータを毎回すべて使う「密な(dense)」モデル
- Qwen3.8-Flash-Next:たくさんの「専門家(エキスパート)」のうち一部だけを使うMoEモデル。Redditのコメントでは、1回に使うパラメータは約60億とされています(未確認)
用語メモ:パラメータ=モデルの中にある数値の数。おおまかに、モデルの「大きさ」を表します。
用語メモ:MoE(Mixture of Experts)=モデルの中に多くの専門家を持ち、入力ごとに一部の専門家だけを使う仕組み。全体は大きくても、1回の計算は軽くなります。
Flash-Nextを自分のPCで動かす方法は、こちらの記事で紹介しています。
関連記事:Strataとは?必要スペックと導入手順
27Bを速く動かす方法は、こちらです。
関連記事:Qwen3.8-27Bをllama.cppで高速化
VRAM 32GBの比較では、27Bが2つのテストで上回った(Redditの報告)
検証の条件
1つ目は、RTX 5090(VRAM 32GB)とメインメモリ64GBのPCで、2つのモデルを「その環境でできる最善の設定」にそろえて比べた投稿です。[自己申告・未検証]
| Qwen3.8-Flash-Next | Qwen3.8-27B | |
|---|---|---|
| 推論エンジン | basalt | ninfer |
| 量子化 | NVFP4 | NVFP4(QAT版) |
| KVキャッシュ | 256K、INT8 | 570K、NVFP4 |
| 同時に処理できる数 | 1 | 4 |
| 推論の深さ(reasoning) | xhigh | xhigh |
用語メモ:量子化=モデルの数値を少ないビット数で表して、ファイルを小さく軽くすること。NVFP4やINT4は4ビット、INT8は8ビットです。
用語メモ:KVキャッシュ=会話の内容を覚えておくためのメモリ。大きいほど長い文章を扱えます。
結果
使ったテストは、ツールを正しく呼び出せるかを測るBFCLと、プログラミングの問題を解けるかを測るLiveCodeBenchです。
| テスト | Flash-Next | 27B |
|---|---|---|
| BFCL(全体) | 78.19% | 81.51% |
| LiveCodeBench(pass@1) | 79.22% | 86.15% |
BFCLの細かい項目を見ると、差がはっきり出ていたのは、長い会話を扱う項目です。
| BFCLの項目 | Flash-Next | 27B |
|---|---|---|
| simple_python(簡単な1回の呼び出し) | 92.50% | 89.75% |
| multi_turn_base(複数回のやり取り) | 56.00% | 64.00% |
| multi_turn_long_context(長い文脈での複数回のやり取り) | 54.50% | 60.50% |
LiveCodeBenchでも、難しい問題(hard)はFlash-Nextが59.00%、27Bが75.00%でした。
投稿者は、「長い文脈や難しい問題では27Bが上回り、短い1回の答えではFlash-Nextが少し有利だった」とまとめています。27Bは4つの作業を同時に処理でき、KVキャッシュも大きく取れることも、27Bを選んだ理由に挙げています。
27Bが常に上だと言い切れない理由
この検証には、投稿者自身やコメント欄から、次のような注意点が出ています。
- テストは全問ではなく、投稿者が選んだ一部の問題(サンプル)で行われた
- Flash-Nextは27問、27Bは7問で、答えが空でした。投稿者によると、設定した出力の上限(128K)を超えて考え続けたためです。空の答えは不正解として数えられています
- コメントでは、「LiveCodeBenchの点が、公式の数値(約90〜92%)より低すぎる。測り方の条件に何かあるのでは」という指摘も出ています
推論エンジンも量子化もそれぞれ違うので、純粋なモデルの差とは言い切れません。
つまり、「VRAM 32GBなら27Bのほうが必ず賢い」とまでは言えません。1人の環境での、1つの比較結果として見てください。
INT4とINT8の違い:ループが起きやすくなる
ループはどんな現象か
ローカルLLMでときどき起きるのが「ループ」です。ループとは、モデルが同じ文や同じ考えを何度も繰り返して、先に進まなくなることです。
Redditの報告:INT4はループが約2.5倍
2つ目は、Qwen3.8-27BをINT8からINT4に切り替えた人が、それぞれ約2週間分の記録を比べた投稿です。[自己申告・未検証]
条件は次のとおりです。
- INT8版はRTX 3090を4枚、INT4版(AWQ)はRTX 3090を2枚で動かした
- 推論エンジンはvLLM、エージェントツールはHermes。設定(temperature 1.0、top_p 0.95、top_k 20、thinking medium)とループの検出方法は同じ
- 用途は、人が介在しない大量のエージェント作業(1か月で1,000件以上)
用語メモ:エージェント=AIが自分でツールを使い、複数の手順をこなして作業を進める使い方。
結果は次のとおりです。
| 項目 | INT8 | INT4(AWQ) |
|---|---|---|
| 1,000回の呼び出しあたりのループ | 1.9回 | 4.7回 |
| ループが1回以上起きた会話 | 6% | 12% |
| 作業ごとの成功率 | 92% | 78% |
1,000回あたりのループは1.9回から4.7回で、約2.5倍です。
投稿者は、ほかにも次のことを報告しています。
- ループはすべて、モデルが考える部分(reasoning)の中で起きた
- 差は文脈が長いほど大きく、約4万トークン未満では1.4倍、8万〜12万トークンでは3.3倍だった
- ループを止めて「続けて」と頼むと、14〜22%の確率でまたループした(ふだんは1%未満)
- 投機的デコード(先の文字を予測して速くする仕組み)を使っていると、ループ中は速度が約200 tok/sに跳ね上がる(ふだんは約107 tok/s)。これをループの検出に使える
用語メモ:tok/s=1秒あたりに生成できるトークン(文字のかたまり)の数。大きいほど速く文章が出てきます。
INT4で必ず増えると言い切れない理由
投稿者自身も、「INT8でもループは起きる。BF16(量子化していない版)でも長い思考のループが起きるという報告がある。量子化だけの問題ではない」と書いています。
コメント欄には、「Q4_K_Mでコーディングに使っているが、ループは起きない」「Q6でも起きない」という声も。投稿者は、自分の使い方が「人が手伝わない、要求の多い作業」なので、ループが起きやすいのかもしれない、と答えています。
また、INT8とINT4ではGPUの枚数も違います。この結果は1人の環境での結果なので、「INT4は必ずループが2.5倍になる」と一般化はできません。
筆者のRTX 5090では、ループの件数に差は出なかった
筆者の環境(RTX 5090/RAM 128GB/Win11)で、Qwen3.8-27Bの速度とループを試しました。推論エンジンは llama.cpp(b12002)、コンテキストは32Kです。Redditの検証とは、エンジンも量子化の形式も違います。
最初はほかのアプリが約10GB使っている状態で測り、Q4_K_M の MTP なしは約60 tok/s でした。GPU を空けて測り直すと74〜77 tok/s で、約2割の差です。下の表は、ほかのアプリがVRAMを使っていない状態の値です。
用語メモ:Q4_K_M/Q8_0=llama.cppで使うGGUF形式の量子化の種類。Q4_K_Mは約4ビット、Q8_0は約8ビットで、INT4/INT8に近い位置づけです。
速度
| モデル | 設定 | 速度 |
|---|---|---|
| Qwen3.8-27B Q4_K_M | MTPなし | 74〜77 tok/s |
| Qwen3.8-27B Q4_K_M | MTPあり・日本語 | 113〜132 tok/s |
| Qwen3.8-27B Q4_K_M | MTPあり・英語のコード | 184〜189 tok/s |
| Qwen3.8-27B Q8_0 | MTPなし | 48〜49 tok/s |
| Qwen3.8-Flash-Next Q2_0(Strata v0.2.9) | 既定 | 194〜223 tok/s |
用語メモ:MTP=モデルに内蔵された予測の仕組みで、先の数トークンをまとめて当てることで速くします。
Q8_0はQ4_K_Mより大きいぶん、速度は約3分の2になりました。Flash-Nextは、Strataのいちばん小さい量子化(Q2_0、約2ビット)で動かした値です。27Bとは量子化のビット数が大きく違うので、速さだけでどちらが良いとは言えません。Flash-Nextでは、4つのプロンプトで同じ出力の繰り返しは起きませんでしたが、10問のループ試験はしていません。
ループ
同じ10個のプロンプトで、Q4_K_MとQ8_0のループを数えました(出力の上限は6,144トークン)。
| 条件 | Q4_K_M | Q8_0 |
|---|---|---|
| 思考オン・temperature 0 | はっきりしたループ 1件 | はっきりしたループ 1件 |
| 思考オン・Redditと同じ設定(temperature 1.0など) | 0件 | 0件 |
ループした1件は、どちらも短歌を作るお題で、思考の中で同じ1行を繰り返し続けました。
筆者の10問の範囲では、Q4_K_MとQ8_0でループの件数は同じでした。Redditの「約2.5倍」は、長い文脈のエージェント作業を約2週間続けた結果なので、この規模の試し方では確かめられませんでした。
VRAM 32GBならどちらを選ぶか
ここまでの報告から言えるのは、次のくらいまでです。
- 長い文脈のエージェント作業や、難しいコーディング:Redditの比較では27Bが上でした。ただし、テストは一部の問題だけです
- 短い質問への1回の答え:Flash-Nextが少し有利という結果でした
- INT4かINT8か:長い文脈のエージェント作業でループが気になるなら、INT8のほうがループは少なかったという報告があります。筆者のRTX 5090では、27BのQ8_0(約29GB)も動きましたが、速度はQ4_K_Mの約3分の2でした
よくある質問(FAQ)
Q. VRAM 24GBのGPUでも同じ比較になりますか?
紹介した比較はVRAM 32GBでの結果です。24GBでの結果は、材料にはありません(未確認)。
Q. ループが起きたらどうすればいいですか?
投稿者によると、ループを止めて「続けて」と頼んでも、14〜22%の確率でまたループしました。コメントには「temperatureを0.6にする」という提案もありますが、効果は確かめられていません(未検証)。
Q. Flash-Nextは、Strataで動かした場合も同じ結果ですか?
紹介した比較のFlash-Nextは、Strataではなくbasaltというエンジンで動かしています。Strataでの結果ではありません。
まとめ
- VRAM 32GBでの比較では、BFCLとLiveCodeBenchの両方で27Bが上回り、短い1回の答えではFlash-Nextが少し有利だった(自己申告・一部の問題のみ)
- INT4はINT8より、ループが約2.5倍多かったという報告がある(1人の環境、エージェント作業)。筆者の10問の試験では、Q4_K_MとQ8_0のループの件数は同じだった
- どの数値も条件がそろった比較ではないので、自分の用途で試して決めるのが確実
関連記事:Strataの量子化の選び方
関連記事:Qwen3.8-27Bをllama.cppで高速化
関連記事
検証メモ
Flash-Next Q2_0 の194〜223 tok/s:Strata v0.2.9、コンテキスト128K、同時4スロット、MTP あり、思考オフ、temperature 0、max_tokens 1024 です。27B と同じ4つのプロンプト(日本語の説明・要約・箇条書きと、英語のコード)を3回ずつ測りました。入力は40〜156トークン、出力は66〜1,024トークンです。
27B との条件の違い:27B はコンテキスト32K です。Flash-Next だけ128K で測っているので、完全に同じ条件ではありません。
Strata v0.2.9 の記事との違い:同じ版とモデルですが、プロンプトが違います。そちらは短い会話(入力27トークン)で144.6〜217.6 tok/s、約4,600トークン入力(SAFETY.md の要約)で181.5〜195.1 tok/s でした。
ループの数え方:表の「はっきりしたループ」は、出力の末尾1,500文字に20文字以上の同じ文字列が3回以上続くか、10文字以上の同じ行が3回以上続くものです。
上限で打ち切られた件数:思考オンで6,144トークンに達したのは、temperature 0 で Q4_K_M 5件・Q8_0 5件、Redditと同じ設定で Q4_K_M 3件・Q8_0 4件でした。各プロンプト1回だけなので、この件数の差から優劣は言えません。
VRAM:Q8_0 は読み込み後の GPU 使用が30,996 MiB(コンテキスト32K)でした。
参考リンク
- Reddit「qwen 3.8 27b vs flash next for 32gb vram and 64gb ddr. BFCL and Livecodebench」:https://www.reddit.com/r/LocalLLaMA/comments/1xjwx04/
- Reddit「Qwen3.8 27b loop testing int4 awq vs int8」:https://www.reddit.com/r/LocalLLaMA/comments/1xjzm9q/
